仕事ができて主導権を握れる人の習慣7

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■仕事がデキる7大条件とは

仕事ができる、と言われて思い浮かぶのはどんなことだろう。できる人のイメージといえば、時間を上手に使い、人を動かし、チャンスに恵まれ……と、こんな風かもしれないし、交渉に長け、人を惹きつけるタイプかもしれない。いずれにせよ、その習慣はさまざまながら、次のような基本的な特徴があげられるだろう。

1.相手の視点で仕事をこなす

自分の作業を、相手がどんな形で渡されたいか、その先の仕事につながりやすいかを考えることで、結果として仕事のクオリティが上がる。

2.頼みごと・交渉が上手く、人を動かす

コミュニケーションにたけていて、人に上手に仕事を振ることができる。自分で抱え込んで無駄に時間を使わず、自分でなくてもいい仕事は人に頼むことでスムーズに全体を進行させる。人を説得する術を心得る。

3.ノーと言える

やらないことを決め、できないことは受けない。やらなくていい仕事を受けることで効率を下げることがなく、きちんとした理由を持って断ることができる。

4.成果のあった面を真似して盗む

成果のあがった方法、良い習慣など、結果がだせる方法をうまく真似たり盗んだりすることで、やがて自分たちにとって一番いい方法が生み出せる。そのために、あらゆる情報にアンテナをはっている。

5.各仕事の細部と、全体像の両方を見わたせる

仕事の細部のチェックはもちろんのこと、ときに一歩引いて全体像を確認することで、細部で必要なことまで見通せる。

6.目標がはっきりしている

最終目標や仕事の期限を明確に設定するため、その道筋で何をすべきかがハッキリする。さらに逆算して仕事をするため、作業効率がいい。

7.優先順位をつけて、効率よく作業をする

その日のうちにこなすべきこと、あとでもいいことを見分けることで大切なことに時間を使えるので、最後に慌てるなどの失敗が少なくなる。すべてに完全を求めずに、抜くところは抜いて必要なことに時間配分をする。

ほかにも「机のまわりが整頓されている:仕事が速い」「オンオフ切り分ける:リフレッシュ」など人によって挙げられることはさまざまだ。紹介した7つでは、最初の4つが「人との関わり」、後の3つは「段取り」に関わる部分だ。さて今回は、人と関わっていくコミュニケーション心理の説得について見ていこう。

■交渉・頼みごとは、空腹時を避ける!

先の2.「頼みごと・交渉がうまい」は、自分だけではうまくいかないことや時間がかかりすぎるために、お願いをする、人を説得し動かす、条件を上手に提示する……といったこと。効率よく仕事をこなす上で必要な力だが、少しのテクニックを使うことで、誰でもうまくいきやすくなる側面でもある。

たとえば、人にお願いごとをしたり交渉をしたりするときに、「ランチョン・テクニック」というものがある。心理学者グレゴリー・ラズランが提唱した心理術で、簡単にいえば食事のときにアイデアを提示し、説得するというもの。実験では、普通の場面で提案をしたときと、食事をしながらでは、食事をしながらのほうがはるかに提案を受け入れてもらえる結果になったという。

人は、食欲が満たされると本能から達成感を得て安心した精神状態になり、いろんな考えを受け入れやすくなる。さらに、食事がおいしくて満足できることが、あなたの話への好意にもつながるという。一番いけないのは空腹のときで、欲求が食に向かってしまう上にイラつくこともある。

つまり、ランチ前のプレゼンよりも、ランチ後のほうが通る可能性が高いわけだ。そして、部下を連れて「おい、メシ行くぞ」も、仕事を頼むときに有効だ。それも、できるだけ旨いメシのほうがいい。

ではアルコールはというと、考えを鈍らせるため好ましくないとされる。調子よく受けてもらえる可能性もあり一見大きな利点にみえつつ、あとで覆される可能性も否定できない。接待は別として、交渉ではできればアルコール抜きでおいしい食事で相手を満たすと、相手はあなたにも、あなたの意見にも好意的になり効果的だ。

さらに、交渉と頼みごとで人を動かすために、行動心理学で次のような方法もみられる。

■主導権を握るテクニック

交渉事で主導権を得るためによく使われるのが、ご存知の方も多いだろう「アンカリング」という手法だ。「アンカー」とはその場を離れないようにする船のいかりのこと。最初に示された数値などの条件が話の基準点(アンカー)として印象に残り、どうしてもそこから離れられない心理傾向をいう。最初にこちらが基本条件を提示することで、交渉の一部始終がその条件を基盤として進んでいくというものだ。

たとえば、よく使われるのが「通常価格3万5000円が、セール価格2万円」といった価格表示だ。最初の3万5000円がアンカーとなり、それに対しての2万円なら「1万5000円の値引き」とお買い得に感じられるだろう。

その品に2万円が妥当かはわからなくても、「1万5000円安い」という事実が示されている。これは価格だけである必要はない。ダニエル・カーナマンの『ファスト&スロー』では、こんな例があげられている。

被験者に0〜100の数字の円盤を回してもらう。各円盤は、必ず「10」か「65」に止まる仕掛けがしてあり、数字が出たら次のような質問をする。

「国連でアフリカ諸国が占める比率は、今出た数字よりも大きい? 小さい?」
「国連でアフリカ諸国が占める比率は、何%か?」

その結果は……
「10」が出た被験者 → 平均「25%」がアフリカ諸国。
「65」が出た被験者 → 平均「45%」がアフリカ諸国。

という答えになっている。そこに提示されたのがまったく関係ない数字であっても、「10」を基準にして少し大きな「25」、「65」を基準にすると少し小さな「45」が妥当に思えてしまうように、アンカーが大きく判断に影響をおよぼしてしまう。これを交渉にうまく活用することで、主導権を握りやすくなるというわけだ。

さて、今回は人への頼みごとや交渉の際に生かせるテクニックの中から少しだけご紹介した。仕事ができる人が巧みにコミュニケーションをしていく中で、こうした心理術をうまく使えば、自分がイメージする落としどころで、さらに効果的に話を進められるようになりそうだ。

[脚注・参考資料]
Changing Mind, Luncheon Technique
ダニエル・カーネマン (著), 村井章子 (訳)『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 』 早川書房 2014

(上野陽子=文)