ウェアラブル翻訳デバイス「ili」

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話した言葉があっという間に外国語に翻訳される、まるで“翻訳こんにゃく”のようなガジェットをご存じだろうか。ログバーが開発したウェアラブル音声翻訳デバイス「ili(イリー)」だ。

【写真を見る】本体の全長は一般的なボールペンよりも短い

インターネットに接続する必要がなく、ボタンを押して話すだけで翻訳音声が流れるili。日本では2017年12月6日(水)に2018台先行発売が開始され、あまりの人気に販売開始から1時間で完売した注目デバイスだ。ウォーカープラス編集部はこのiliを一足先に入手。今回はその翻訳精度を2つの視点から検証してみた!

■ 用途は海外旅行に特化

まずはiliの概要を説明しよう。本体は白く平たい棒状。全長は標準的なボールペンよりも短く、重量もわずか42g。ジャケットやズボン、シャツの胸ポケットにも収まる小ささと軽さだ。

ボタンは、表面の大きな丸ボタンと側面にある2つの小さなボタンの3つだけ。側面上の電源ボタンを押すとiliが起動。表面のボタンを押しながら日本語でしゃべることで、設定した言語に翻訳される。日本版の対応言語は英語、中国語、韓国語の3言語で、本体側面にある2つのボタンのうち下のボタンを長押しすることで切り替えられる。なお、入力言語は日本語のみで、外国語でしゃべって日本語に翻訳する機能はない。

あらゆる面でコンパクトになっている理由は、iliが旅行用に特化しているからだ。翻訳を難しくする要素のひとつが、膨大な語彙の選別。iliは“ワンフレーズの旅行会話”に用途を絞ることで、語彙の揺れを抑えて翻訳精度を高めているという。それゆえ、業界用語や専門用語、商談や医療現場といった特殊な語彙が用いられる場には対応できない。あくまで一般的なユーザーの海外旅行を想定したデバイスなのだ。

翻訳の精度を検証

とはいえ、中には「本当に正しく翻訳されているのか?」と疑問に持つ人もいるはず。iliには翻訳再生機能が備わっており、翻訳後に側面下側のボタンを押すと、iliが認識した言葉を日本語で再生してくれる。明らかな誤訳や意図していない翻訳の場合は確かめることが可能だ。

だが、細かいニュアンスまではどうしても分からないもの。そこで、台湾出身で、中国語と日本語のバイリンガルのスタッフに、iliの日本語から中国語への翻訳を聞いてもらった。1フレーズごとに翻訳再生機能で意図通り翻訳されているかを確認しつつ、いくつかのフレーズを検証。その結果は、「正確さを100パーセントで言ったら90パーセント以上」。ネイティブからすると文法的に気になる部分もあったそうだが「それでも意味自体はすべて通じている」ということだった。

■ 話す時はあくまで標準語で

翻訳の質が保証できたところで、今度はダメ元で“方言を翻訳できるか”の実験。あえてメジャーな関西弁ではなく、筆者が話せ、かつイントネーションが標準語に比較的近い北九州弁で話してみた。「もう少しこまいのある?(もう少し小さいのはある?)」を翻訳再生すると「もう少し困りのある」、「これなんぼ?(これいくら?)」は「これなんぼく」と、標準語の語彙にないものには対応できていない様子だ。

後で関西出身のスタッフにも試してもらったが、関西弁ではいくつか正しく翻訳できているものもあった。ただ基本的には、英語の教科書の例文のように、短くまとまった標準語で話すのがベターだ。

スマートフォンにも翻訳アプリはあるが、日本国内と違い海外ではネット環境が整備されていないところも多い。iliがあればネット環境を必要としないし、スマートフォンの画面を使いながら翻訳を同時にこなすという使い方もできる。翻訳能力は実用レベルと言って申し分なし。海外旅行をぐっと身近に、かつ身軽にする新時代のデバイスと言えるだろう。(東京ウォーカー(全国版)・国分洋平)