"自分は偉い"と思っている人の2つの特徴

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人に何かを頼んだとき、どうして言った通りにしてくれないのか。その原因は、あなた自身の言い方や口グセにあるのかもしれない。24の症例とともに、改善するための「処方箋」を明らかにしよう。今回は、教育改革実践家の藤原和博氏に「自分のほうが偉いと思っている」について聞いた――。(全24回)

※本稿は、「プレジデント」(2016年10月31日号)の特集「『超』ウケる言い方入門」の記事を再編集したものです。

■「負の体験談」こそ人を惹きつける

心の中で「自分は偉い」と思っている人には共通する2つの特徴がある。

1つ目は「質問をしない」ということだ。私は文部科学省から依頼されてこの5年間、全国の小中学校の校長や副校長、合計3000人以上に研修を行ってきた。校長先生とは、学校における「学びのボス」である。自らの態度や行動によって生徒たちに「学ぶとはどういうことか」を教えるのが仕事だ。学ぶという言葉は「真似る」が語源といわれる。人を真似するには最初に質問をする必要があるだろう。

ところが校長先生はたいていの場合、面談の機会があっても私に質問をしてこない。それはつまり「私があなたから学ぶことは何もない」という無言のメッセージだ。これでは生徒たちに「学びの本質」を教えることは難しいだろう。

質問の大切さは、会社の上司と部下の関係にもいえる。部下に対して質問をしない上司は、「おまえから学ぶことは何もない」と伝えているのと同じ。そもそも質問をしない人は、まず例外なく仕事ができない。

どの業界でも凄腕の営業マンは、自社商品の説明よりずっと多くの時間を見込み顧客への質問に割く。売るのが自動車でも不動産でも、相手の趣味や嗜好、家族構成、家族の関心事などさまざまな情報を仕入れることで初めて「相手の脳の中に飛び込む」ようなプレゼンができるからだ。

逆に、できない営業マンはひたすら自分の扱う商品の「説明」に終始する。興味がない商品の説明をいくらされても買う気が起こらないのは当然だ。部下や取引先に自分の話を真剣に聞いてもらいたい、そして行動につなげてほしいと願うなら、最初に「自分から質問する」ことが大切なのである。

「偉そうに感じる人」の2つ目の特徴は「自分に関するマイナスの情報を開示しない」ことだ。「人生の挫折経験、病気、仕事の失敗といった話をすることは、相手に弱みを見せることだ」とでも考えているのだろう。

しかし本当に仕事ができる人は皆、自分の「マイナスの情報」を実に魅力的に語ることができる。あえて相手に自分の「弱み」を握らせると言ってもいい。それはそうした「負の体験談」こそが人を惹きつけ「この人を応援したい」と無意識に感じさせると知っているからだ。

私のプレゼン研修では参加者を2人ずつペアにして、互いに最初の1分間はポジティブな自己紹介、次の1分間では挫折、病気、失敗の話をしてもらう。すると明らかに、最初の1分間よりもネガティブな後の話のほうで会場は盛り上がる。

ただ、このときに大切なのは「語り方」。ネガティブなことをそのまま暗く話しては、聞いているほうも辛くなってしまう。「こんなひどい挫折をしたが、それがあって今の自分がある」とマイナスをプラスに転換した体験談を魅力的に語る訓練を積むことだ。

40歳を過ぎた人にとって自分の過去の「負の経験」は、磨き込めば「独自の武器」となる。その「マイナスのコミュニケーション力」を磨いた人が、人生の後半戦で勝者となれるのだ。

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藤原和博(ふじはら・かずひろ)
教育改革実践家、奈良市立一条高校校長。1955年生まれ。都立青山高、東大卒。元リクルートフェロー、元杉並区立和田中校長。一条高では生徒のスマホを活用、世界初の「スーパー・スマート・スクール」を目指す。著書『藤原先生、これからの働き方について教えてください。』など。
 

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(教育改革実践家 藤原 和博 構成=大越 裕 撮影=的野弘路)