海外ではスカイプなどによるWEB面接が浸透中だが、日本でも徐々に採用が広がっている (写真:chombosan / PIXTA)

採用の現場で「WEB面接」「オンライン面接」が少しずつ広がっている。

WEB面接とは、文字どおりWEBを通じて、パソコンやスマホ、タブレット越しに面接をすること。海外ではスカイプなどを使った面接がかなり浸透しており、海外にいる留学生や外国の企業に就職を目指す学生が利用するケースが多くなっている。

国内の採用現場では、まだ多くはないが、中途採用を中心に採用する企業も増えている。転職の求人広告には「WEB面接可」を謳い文句にする企業もある。

今の仕事を続けながら、面接を受けやすい


ブルーエージェンシー社は昨年からオンライン面接管理システム「インタビューメーカー」をリリースしている。現在の導入企業は、ダイドードリンコやミニストップなど、800社を超す。主に中途採用やアルバイトの募集で使われるケースが多いという。企業側はシステムの導入が必要だが、面接される学生のほうは、カメラ付きのスマホやパソコンさえあれば、簡単に面接を受けることができる。

同社の前田裕人社長は「海外ではWEBで面接するのが当たり前の時代。人手不足の中、単に『会社に来てもらう』だけでは、人材確保は難しい」と語る。対面面接のほかに、WEB面接を採用の選択肢のひとつとして加えてもらいたいと思い、現在のサービスを始めたきっかけだ。

面接を受ける立場からのメリットは、何といっても移動時間を省くことができることだろう。志望する企業が遠方にある場合や、転勤中で遠方にいる人が、転職先を探す場合、WEB面接は効力を発揮する。

また、転職希望者の中には、今の仕事が忙しくて平日に休みを取ることが難しい人も多い。仕事をしていれば、どうしても面接は就業後で、面接を始めるのはかなり遅い時間になってしまう。採用する会社側にとっても、遅い時間帯の面接は負担だ。WEB面接を活用し、車の中や喫茶店などで、面接を受けるケースもあるという。

さらには自分の家で面接を受けるというケースも多くなっている。いつも生活している場所のため、リラックスして面接を受けることができるからだ。志望先の会社の会議室では、”アウェイ”で勝手がわからず、緊張した中で、面接官の質問に答えなければならないが、文字どおり”ホーム”であれば、自分のペースで話をすることができる。対面ではなく、画面を通すことで、本音で話せるという人が多いようだ。


履歴書から面接まで、将来はWEBで就活が完結するかもしれない(写真:chiiro / PIXTA)

ただ、あまりにもリラックスしすぎるというのは禁物。「基本は対面の面接と同じ。Tシャツ1枚で受けるというのではなく、きちんと面接に行くというスタンスで望んでもらいたい」と前田社長はアドバイスする。自宅の場合、画面を通して、部屋の中も相手にわかってしまう。人事担当者からすれば、そうした素の部分も含めて人物を判断することができるが、あまりにも見せられないような部屋の場合は、壁をバックにするなど多少の配慮が必要になるだろう。

また技術面の問題もクリアしておいたほうがいい。Wi-Fiなどの電波状況が悪い場所では、映像が途切れたりする場合がある。そうした接続環境については事前に確認しておくべきだろう。面接中の音声を聞き取りやすくするために、ヘッドホンなどを活用するのも手という。

面接現場をブラックボックスにしない

WEB面接に関しては、企業側にとってもメリットは大きい。前述のとおり、本音の話を聞きやすいということもあるが、WEB面接の状況を録画することで、次の面接や判定会議での参考にできるという点が大きいという。「動画を5分でも見れば、文章では伝わらない部分も確認できる」(前田社長)。面接官がどんな質問をしたかについても確認することができ、ブラックボックスになりがちな面接現場をマネジメントすることもできる。

「インタビューメーカー」では、さらに面接の進捗管理画面や、面接時にヒアリングシートを表示する、といった機能を付けている。ゆくゆくはAI(人工知能)やビッグデータを活用して、面接の様子を解析するシステムを考えているという。

こうしたWEB面接は転職情報会社を中心に導入が進んでいる。求人情報サイト大手のエン・ジャパンでは、ミドル層専用の転職求人サイト「ミドルの転職」を2017年1月にリニューアルした際、オンラインビデオ面接機能を導入し、多忙な管理職層の面談実施の可能性を広げている。採用支援システムの一環として、面接官がビデオ越しにメッセージを送る「ビデオインタビュー」機能を今年から開始し、WEBを活用した転職活動をサポートしている。

国内の新卒採用の現場では、導入事例はまだまだ少ないが、WEBによる会社説明会はかなり普及してきている。リアルタイムで中継する説明会では、チャット機能を使って質問を受けつけ、双方向のコミュニケーションが可能となっている。

まだまだ売り手市場が続く中、これまでと同じように「会社に来てもらって説明会や面接をする」だけで、人材を確保するのは難しくなっている。WEB面接など新しいツールを使い、間口を広げていくことが求められているのかもしれない。