創業者の父と実の娘による激しい“お家騒動”を繰り広げた大塚家具が、6年ぶりの赤字に転落だ。このほど2016年12月期の業績予想を大幅に下方修正。税引き後利益が約16億円の赤字見通しとなり、発表直後の株価は一時9%も下落した。
 要因は何と言っても売上高が激減しているためだ。今期は前期比42億円減の538億円と、過去15年間で最低。大塚家具は父娘が販売路線をめぐり、株主総会において委任状争奪戦を展開。結果、娘の久美子社長が勝利した。しかし、これだけ赤字になると、今後、久美子社長の経営手腕が問われかねない。大塚家具に何が起きているのか。
 「かつて大塚家具の特徴だった会員オンリー制度を廃止。誰でも気軽に入ることができる店舗へと順次リニューアルし、お客さまに必ず付き添っていた接客手法も変更しました。そうしたオペレーションの運用の不慣れさもあります」(大塚家具広報室の担当者)

 昨年は5月から6月にかけての「おわびセール」で爆発的に売り上げが伸びた。年末には全店での売り尽くしセール。そのため'15年12月期単独決算は売上高が前期比4%増の580億円、営業利益は4億3700万円の黒字(前期は4億200万円の赤字)に転換した。
 「しかし、今年に入ってからは、その反動で1月は前年同月比10.7%減、2月は3.7%減、3月は11.8%減。昨年はテレビが面白おかしく騒動を取り上げ、久美子社長の露出度も多く、社長自身が広告塔になった。今年はそれもない。それも売り上げ激減につながっている。今は経営者の本質が問われているということです」(経営アナリスト)

 それにしても「気軽に入りやすい」店づくりという久美子社長の方針は、消費者に受け入れられているのだろうか。前出の広報室担当者によれば、繁華街などでは客足は会員制時代より確かに伸びているという。しかし、それでも売り上げが伸びないとなると、気軽に入店はするが「購買」には結び付かない客が多いということになる。経営コンサルタントはこう指摘する。
 「購買しやすい品をそろえるとは言うものの、ニトリやイケアに比べればやや高め。つまり高級家具を買う客は大塚家具離れし、若い層は一度大塚を冷やかしてから、結局は価格が安いニトリやイケアに舞い戻るという展開になっている。一定のニーズ層を捉えきれていないのです」

 その点を、あらためて広報室にぶつけた。
 「新しい大塚家具は低価格のものから高級家具、そして和風、アジアン風、さらにはヨーロッパ風とすべて一同にそろえています。その商品の幅広さと幅広い価格帯、さらにはコーディネート、アフターメンテナンスもしっかりやる方針です。その多様性と信頼に応える、そうした面がまだまだお客さまに浸透していないと思い、その必要性をしっかり伝えたいと思っています」

 一方、自ら興した会社を締め出された格好の父、大塚勝久元会長のその後はと言えば、長男の勝之氏を社長に据え新会社『匠大塚』を設立。いよいよ6月29日に大塚家具の創業地、埼玉県春日部市に大規模店舗をオープンさせる。目と鼻の先には大塚家具のショールームがある。
 「撤退した西武百貨店の跡地に5階建て約2万7000平方メートル、国内最大級の新店を展開する。匠大塚は東京・日本橋でも4月、高級家具のショールームをオープン。経営方針は、基本は会員制による高級路線と会長が大塚家具時代に編み出したビジネスモデルに徹底するということで鼻息は荒いようです」(流通関係者)

 しかも、その新会社設立に当たっては大塚家具のベテラン社員、幹部クラスが50人、70人と続々と匠大塚に大量転職しているというのだ。そうした事実があるのか再び大塚家具に聞いた。
 「詳細は不明ですが、元会長を慕う人も少しはいるし、定年退職された人が後に匠に行く人もいると思います。しかし、大塚家具は16店舗で全従業員は1700人前後。その人たちに極端な大移動はありません。新入社員も今年、来年ともに例年通り70名程度の採用を進めています」
 どうやら一部の報道が大げさという認識のようだ。

 いずれにしても久美子社長が昨年、委任状争奪戦に勝ったのは、株主対策で株主還元重視を掲げたことも大きい。
 「大塚家具は配当を3年間は倍増の年80円にする方針。そのため株主には人気は高い。株主還元策を徹底させながら、その間にビジネスモデルを転換、成長軌道に乗せる計画だったはずです。久美子社長も転換期はある程度の業績低迷は予測の範囲内。しかし、今回は想像以上に数字が悪い。今年下期もこの状態だと“新生・大塚家具”内で責任問題が浮上しかねません」(金融アナリスト)

 久美子社長、正念場だ。