台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下で経営再建を目指すシャープで、かつて経営の中枢を担った幹部たちが相次いで他社に転職していることが波紋を広げている。特に「世界の亀山モデル」として一世を風靡した三重・亀山の液晶工場立ち上げから液晶事業に携わった方志(ほうし)教和元専務が7月1日付で、競合する液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)の副社長に就任することをめぐっては、鴻海、シャープともに心中穏やかではないようだ。(石川有紀)
敵陣に「流出」否定
「退職した人材は『流出』したのではなく、シャープの液晶事業をだめにしたのだから、敵陣にいったのは良かった」
台湾北部・新北市の鴻海本社で22日に開いた株主総会で、シャープの人材流出を指摘された郭台銘(英語名、テリー・ゴウ)会長は強い口調でこう言い放った。そして、「シャープの若手社員を自分の手元において教育している。私もいまはシャープ再建のため毎晩遅くまで仕事しているが、新たな創業のような気持ちだ」と次世代の人材育成への熱意を語り、株主の懸念払拭に躍起だった。
さらにシャープの次期社長に就く鴻海の戴正呉副総裁は、株主総会終了後、日本の報道陣に「旧経営陣は業績の責任を取って退職していっただけ。なぜ『人材流出』と書くのか」と怒りあらわに抗議した。そのうえで、機械メーカーに転職していた複写機部門の技術者、中山藤一元専務にシャープ復帰を直接働きかけたと明かした。