100人の村

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「老後のための絵本」とでも言おうか、面白い本を見つけた。
本の題名は、あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら
(江口治著)

この1億2700万人の日本を100人の村人に例え、日本の実情を、少々悲観的な数字を並べながら「僕らの日本はこんなにも残酷だ!」と迫る。
絵本仕立ては、サカモトセイジのイラストです。このイラストが問題の深刻さを和らげています。この本は”老後のための絵本”と言った面白いコンテンツになっています。

面白さは、第2部「これからは3つの資本で生き延びよ!」です。
CCF20160520_00000著者の江口治はFP (Financial Planner)です。だかろこそ、さまざまな人生を見てきたのでしょう。人生でお金のウェイトはみんなが考えているほど、実は重くないと言い切っています。

3つの資本とは、お金、自分資本、人間関係の3つだそうです。お金が大切だと思う人が大勢います。でもここには落とし穴があるようです。

お金を稼ぐことを生活の中心に置き、そればかりに集中すれば、自滅を招くことになるだろう。なぜなら、内的な安定性(心の安らぎ、強さ)が収入や資産に依存しているならば、それらに影響を及ぼすものはすべて脅威となってしまうからだ。
お金中心の限界は、人間関係などの大きな問題に直面したときに明確になる。(USAの経営コンサルタントStephen R Coveyの格言集より)

お金基準で生きていると、恐怖や不安から自由になれません。
本来、お金を貯める目的は、お金を使う目的があるからなのに、それがはっきりしない、お金がたくさんある安心感や、選択の自由が手に入ると思っているからなのです。
不安と心配のために、お金を貯めるのです。そしてお金を貯めることが、いつの間にか目的になってしまいます。

お金は資本の一つですが、全てではありません。将来も安定して「稼げる」「食える」商売でないと、本当の資本とはいえないでしょう。そういった意味で、お金より自分資本が大事です。
例えば「」が付く商売、士業しぎょうという職業があります。
弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士、技術士、公認会計士、一級建築士、不動産鑑定士、中小企業診断士、ファイナンシャル・プランニング技能士、医師、歯科医師、獣医師、看護師、薬剤師、義肢装具士、社会福祉士、介護福祉士など枚挙にいとまがありません。

しかし、士業といえども変化します。例えば、会計ソフトが進化して税務処理自体さして難しいものでなくなったり、医師も需要と供給のバランスで食っていける商売でなくなったりします。

では、もっとも大事な自己資本とはなにか? そして将来、人工知能(AI;Artificial Intelligence)やロボット(Robot)やIoT(Internet of Things)の時代になっても、コンピュータにはできない能力を持つとは、どういったものなのでしょうか?

江口氏は、人間にしかできない能力があると言います。そしてこれこそが、究極の自分資本だと言う訳です。

どんなに不遇な状況に置かれても、決してあきらめないという「ストレス耐性」の強さも自分資本である。黙々とストレス状況に耐えて、チャンスを創っていくというねばり強い意思と行動力は、ロボットの計算力・記憶力からは生まれない。自分資本を鍛えることが(中略)極めて重要な事だと考えている。

最近、不屈の精神(Perseverance)が注目されています。特にレジリエンス(Resilience)即ち、望ましくない状況から脱し、安定的な状況を取り戻す力や、社会を回復させる力というものが、最近注目されてきています。

ドイツ語には、ゲゼルシャフトGesellschaft(会社、利益社会)のほかに、共同体,共同社会を意味するゲマインシャフトGemeinschaftという語彙があります。
ゲマインシャフトは、会社での人間関係とは異なるつながりです。価値を交換し合うつながりで、自分資本をもとに人が困っている点を支える人間関係です。
一方的で、頼ったり甘えたりする仲ではありません。お互い高め合う仲です。そういったゲマインシャフトは自己資本です。

そして最後に、大事なのは「所有」志向がないことが、これから生きて行くうえで大事な要素で、究極は何も持たないことだそうです。
何も持つな。借金するな。身軽になることが、これからの時代の生き方だといいます。
土地や設備を所有している故の不自由さがあります。
究極、所有していても死んだら、まったく意味ありません。日頃から無くて楽しめる人生を心がけないといけない、というのが結論です。

年をとっても身体は元気で、信頼できる友人も、愛する家族もいる。目標も持っていて、何とか実現しようとしている。お金のかからない趣味もある。こういうことであるなら焦らずチャンスを待とうじゃないか。という生き方もある。


モリパパの個人的な経験から

入社(1949年)した頃、報告書やレポートは青焼きして配布していました。青焼きが白黒のゼロックスになり、手書きがワープロになり、ワープロがPCになり、PCのWord,Excelで管理レポートが使われ始め、報告書はE-Mailになり、E-Mailで世界どこからでも連絡報告できるようになり、海外とはネット会議をするようになりました。また受発注は全てがネットで管理され、毎日が決算になってしまいました。
この間の激変はたった30年そこそこで起きました。これからの30年には、どのような変化が待ち受けているのでしょうか?
働き方は大きく変わって行きますし、それにつれて教育や家庭も変わってしまうでしょう。

少なくとも、大企業のサラリーマンとして勤めることが、いい時代は終わっています。