写真1●「INDUSTRY CO-CREATION(ICC) TOKYO 2016」内の、AIをテーマにしたセッション。議論は、東京大学の施設内のオープンスペースを活用して行われた
写真1●「INDUSTRY CO-CREATION(ICC) TOKYO 2016」内の、AIをテーマにしたセッション。議論は、東京大学の施設内のオープンスペースを活用して行われた
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 「AI(人工知能)が生かせる領域はどこか」「AIは、本当に人間の仕事を置き換えるのか」「AIが普及したとき、子どもには何を教えたらいいのか」――。今関心を集めるAIに関する様々なテーマについて、この分野のキーパーソンが議論するパネル・ディスカッションに参加した。シナリオなし、時に哲学的なところに踏み込んだ議論の一端を紹介する。

 このディスカッションは、2016年3月下旬に開催された「新たな産業を創出する」ことを目指したビジネスイベント「INDUSTRY CO-CREATION(ICC) TOKYO 2016」の中の1セッションとして行われた。ICCは、ICCパートナーズ代表の小林雅氏が2016年に立ち上げた。

 パネラーは、日本IBM技術理事の武田浩一氏、東京大学特任准教授の松尾豊氏、東京大学教授でソニー・コンピュータサイエンス研究所の副所長でもある暦本純一氏の3人。それぞれ、コグニティブ(認知)コンピューティング、人工知能、Internet of Ability(人間の能力のネットワーク化)の“顔”となる面々である。モデレーターは、takram design engineering代表の田川欣哉氏が務め、テンポ良く質問を繰り出し、パネラーの本音を引き出した。

有望な領域は「とにかく画像」

 田川氏がまず切り込んだのが「近未来において、AIの可能性を感じる領域」。松尾氏は「とにかく画像がいい」と端的に回答した。自然言語処理や検索といった、これまで研究が進んでいた分野よりも成果が期待できるというのだ。同じような理由から、対話分野も期待が持てるのだという。

 武田氏も対話に注目する。具体的に挙げたのがコールセンター業務。武田氏はWatsonが開発された背景として、多くのコンテンツがデジタル化されたことと、トレーニングデータを挙げた。同じ条件がコールセンターには整っている、というのがコールセンターを選んだ理由だ。

 20年後の未来について松尾氏は「調理や掃除などの動作系」と「自動翻訳」を選んだ。後者については、視覚的・運動的概念と言葉をひも付けることで「自然言語処理の飛躍は、5~10年で起こる」と予測した。

AIは人間の仕事を置き換えるのか

 よく言われる「AIが人間の仕事を置き換えるのか」という問いに対しては、登壇者からは「共存」のシナリオが示された。コールセンター業務にAIが広がるとした武田氏は「単純なQ&Aなら自動化できそう」としつつも、「困っている理由を汲みとって答えを見出すという、本来の人間的なところ」については人手が必要という役割分担があるとみる。