「今までで一番怖かったことはなんですか?」

元宇宙飛行士のChris Hadfieldさんは、TED Talkで"恐怖を克服すること"について語った時、この質問から始めました。Hadfieldさんの答えは、「初めて国際宇宙ステーションの外を歩いた時に、完全に目が見えなくなった時」というかなりドラマチックなものでした。

恐れているものが生命を脅かすものでも、経済的な恐怖でも、失敗や恥ずかしさに対する恐怖でも、やらなければならない一番大変なことは、恐怖心を克服するということです。今回は、Hadfieldさんの経験を元にした恐怖を克服する方法をご紹介しましょう。

1. 実際の危険度と恐怖心を比較する

蜘蛛が怖いとします。確かに蜘蛛はかなり怖いです。しかし、地球上には5万種以上の蜘蛛がおり、そのうち有毒なのはほんの数十種です。Hadfieldさんが登壇したTED Talkが開催されたカナダには、有毒な蜘蛛は、クロゴケグモただ1種です。しかも、このクロゴケグモには赤い斑点があるので、見分けやすいです。

蜘蛛の話は、恐怖心と実際の危険度の不一致の一例です。飛行機に乗ることでも同じことが言えます。実際の死亡率の統計では逆なのに、ほとんどの人は、車を運転することよりも飛行機に乗る方が怖いと感じています。

2. 練習する

怖いと思っていることをやればやるほど、恐怖心は薄れていきます。今度蜘蛛の巣を見かけたら、あえてそのすぐ横を歩いて通りすぎてみてくださいと、Hadfieldさんは勧めています(もちろん、クロゴケグモがいないかどうかは間違いなくチェックしましょう)。それを100回やれば、恐怖心が薄れていき、蜘蛛や蜘蛛の巣を見ても大したことはないと思うようになります。「朝公園を散歩していても、おばあちゃんの屋根裏部屋に行ったり、地下室に入ったりしても、蜘蛛の巣が怖いと思わなくなります」

実際に危険であっても無くても、見慣れないもの、よく知らないものに対して恐怖心を抱くのは、人間の本能の一部なので、このような感覚は極めて普通です。逆もまたしかりで、とても普通のことでも、あまりやらないようになると、それをするのが怖くなることもあります。私はニューヨークのマンハッタンに住んでいたことがあり、飛行機に乗るばかりで車を運転することはほとんどなかったので、飛行機に乗るのはまったく怖くありません。でも、車を運転するのは怖いです。ですから、怖いと思っていることがあれば、何度もやってみましょう。

3. 準備する

恐怖の瞬間が来た時に何をすればいいかがわかっていれば、恐怖心はかなり抑えられます。例えば、宇宙空間に行くような時にも当てはまります。Hadfieldさんは、宇宙空間を歩いたことはありませんでしたが、水中で何千回も歩く練習をしたり、バーチャル体験ラボでかなり近い体験をしていました。ですから、Hadfieldさんも仲間の宇宙飛行士も、宇宙空間や宇宙服がどのようなものかすべてわかっていました。"何かが起こって動けなくなった仲間を助ける練習"までしていたので、Hadfieldさんは、宇宙遊泳しているはずのパートナーが気圧調整室で浮かんでいたら、必要に応じて中に押し込めないといけないこともわかっていました。

また、そのお陰でHadfieldさんは冷静でいることができ、ビジョンも明確になりました。ヘルメットの中に油と石鹸を混ぜた曇り止めを塗っているかのように、問題がクリアに見えるようになったのです。

4. 得られるものとリスクを秤にかける

では、本当にとても危険な恐怖に遭遇した時はどうすればいいのでしょう? 最近起こったヴァージン・ギャラクティック社の爆発事故を見ていると、2014年の今でも、宇宙旅行というのは不確定要素の高い事業だということがわかります。Hadfieldさんがスペースシャトルに乗り込み、飛行中に何らかの事故に遭うかもしれない確率は38分の1だそうです。38分の1の確率で飛行機事故が起こるとしたら、誰も乗らないと思います。どうしてHadfieldさんはスペースシャトルに乗ったのでしょう?

それは夢を叶えたかったからだ、とHadfieldさんは言います。9歳の頃から宇宙に行くのが夢だったのです。地球を外から見るには、他に方法がありません。そしてHadfieldさんは、宇宙空間から撮った美しい地球の写真を見せてくれました。「不可能だと思っていた9歳からの夢を叶えたいと思ったから、圧倒されるほどの恐怖も練習で乗り越えたのです」

あなたには、恐怖心が無いとしたら、夢を叶えるために向き合ってもいいと思うような危険はありますか?

4 Simple Steps to Conquer Your Fear|Inc.

Minda Zetlin(訳:的野裕子)

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