相手の意思を尊重する〜『「ほめる」技術』を読んで学んだこと〜


Flickr20140111103132 by choiyaki

ぼくは、教えることを職業としています。でも、教えるのって、ただわかりやすく物事を伝えればいいのかというと、そうでもない。わかりやすいことはもちろん必要で、それに加えて、やる気を引き出したり、気持ちを盛り上げたり、興味をそそったり、ということたちもとても重要になってきます。学ぶ側にいる相手との関係作りもむちゃくちゃ大切です。

本書から、教える以外で大切にすべきことのたくさんを学ぶことができました。

人は、承認されたい

「人は、承認されたい」。その前提をベースとして、本書は展開していきます。

人間っていうのは、大昔から協力関係を築くことで生き延びてきました。長い年月をそうやって過ごし、進化してきたため、協力し合う中に入れないことに、大きな恐怖を覚えます。


自分が協力の輪の中に入っていないということは、ひとりぼっち、つまり「死」を意味するわけですから、これはもう細心の注意を払ってチェックをかけています。そして、そのチェックに対して「イエス!」で答えてくれるのが、他人からの「認めているよ」という言葉なのです。

認めてもらえると、確かに自分は輪の中に入ることができているんだ、と実感できる。不安がなくなり、恐怖から解放されます。

安心させてくれた人には、大きな信頼を寄せることになります。だって、「死」を感じる恐怖から解放してくれた恩人なのですから。

上手に相手を認める、ひとつの方法が「ほめる」という行為になります。

観察する

上手に相手をほめる、認めるためには何が必要でしょうか。「とりあえず、すごいすごい!とほめりゃいい」ってのはちょっと乱暴すぎますよね。


ほめるというのは、ただ「すごい!」「すばらしい!」と美辞麗句を投げかけることではない、と。相手が心の底で、他人から聞きたいと思っている言葉を伝えて初めて「ほめる」という行為は完結すると。

相手が聞きたいと思っている言葉を知るためには、その人を観察する必要があります。何を求めているのか、上手くできるようになったところはどこか、本人ががんばったところはどこか。


相手をよく見て、相手が日々どんなことを思っているのかを洞察して、どんな言葉を投げかけられたいのかを熟慮して、初めて「ほめ言葉」は発せられるべきものです。

的外れな言葉を投げかけられても、なにもうれしくありませんよね。髪の毛を切ってから1週間ほど経って、「髪きった?よう似合ってるね」と言われても、「1週間前に切ってたの、気づいてなかったんかいな」ってことになっちゃいます。せっかくのほめ言葉が台無しです。

まずは観察する。だって、相手をしっかりと見てもいないってことは、それだけでもう相手のことを認めてはいないってことになりますもんね。観察はとても大切です。

任せる

相手のことを認める方法は、ほめるだけではありません。何かを任せる、やってくれないかとお願いすることも、認めていることを伝える一つの方法になります。


任されると、ものすごく自分の存在が際立ちます。この集団の中で必要とされていると感じられるし、協力の輪の中に確かに組み入れられているんだなと思います。

実際、任されるとうれしいです。押し付けられるのではなく、「お前ならできる。やってくれるな!」と任されると、なんとか形にしたいという気持ちが強まります。

逆に、何もさせてもらえなかったら、つまんないです。任せられない、ということは、信頼されていない、認められていないということ。指示ばかりで、自分の力で頑張れる部分がまったくないことに対して、やる気はなかなか湧いてはきてくれません。

任せるときには、注意すべき点があります。それは、「途中で口を出さない」こと。小さなことでいちいち確認されたり、口出しされると、任されたとしても、「実は全然信頼されてないんだな」と感じ、かえって逆効果になっちゃいます。

任せたいときも、やっぱり観察するっていうのは大切になってきます。


任せるのがうまい上司は、常日頃から部下に何を任せられるのかを一生懸命探しています。

ほめるにも任せるにも、日々観察し、どこをほめることができるか、何を任せることができるか常に考えておく必要があります。

いいところに目を向ける姿勢が、すごく大切です。

尊重する

ほめる目的は、相手を認めていることを伝える方法の一つなわけです。あくまでも方法の一つ。ほめることだけが認める唯一の方法ではありません。任せることも、認める一つの方法となりますし、「おはよう」「元気?」と声をかけることも、「ありがとう」と伝えることも。そんな、何げなくかける言葉の一つひとつが、相手を認めることにつながっていきます。


意見を求めるというのは、その相手に対する大きなアクノレッジメントです。相手の中では期待されている、信頼されているという意識が高まります。

意見を求めたり、日々の会話を真摯にうけとめることも。


何気ない話の中で出てきた何気ないことを彼が真剣にすくいあげてくれることに、多くの人は感動するのです。

相手を尊重する。その気持ちを持って接すること。それが1番大切なのだと思います。


単にほめることだけがアクノレッジメント(認めること)ではありません。部下に対して君を大事にしている、大切にしている、メンバーの一員として認めている、こうしたことを伝えるすべての行為、言葉がアクノレッジメントです

”認める”とは、相手を尊重するすべての行為に現れるものなのでしょう。

おわりに

教える立場にいる人は、教える相手よりも知識も経験も多いため、どうしても「できないところ」に目が行きがちになってしまいます。そのため、注意したり指導したり叱る機会が多くなってしまう。これではなかなか相手といい関係を築くことができませんし、叱られてばかりでは、やる気もどんどんなくなっていっちゃいます。

できないことは今できなくても、今後できるようになっていけばいい。まずは、できるところ、良いところに目を向けるよう心がける。それが、相手を認めることにつながっていくのだと思います。

では、お読みいただきありがとうございました。

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