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●1,000店を目指すチェーンの勢い
2000年代前半から目立ち始めた“手もみ”などを用いて体の緊張をほぐすリラクゼーション店。矢野経済研究所の「ボディケア・リフレクソロジー市場規模推移」によれば、2011年に約990億円規模だった市場は微増を続け、2015年には約1,077億円(予測)規模になるとしている。こうした中、スタートからわずか6年で全国に500店舗超を展開するまでになった企業がある。株式会社りらくだ。

○ロードサイドを中心に出店拡大

もともと同社は大阪を基盤とする美容室だった。それがわずかの期間で、運営する「りらくる」を500店舗以上、売上高200億を超す業界の“リーディングカンパニー”ともいえる存在になった。この急成長のカギは、その戦略にある。

同社の執行役員 小河博嗣氏は「ロードサイド中心に店舗展開することで、急成長を果たしました」と、出店先のターゲットを定めたことが急成長の理由だと話した。さらに、撤退したコンビニ店舗などの居抜き物件を活用することで初期投資を抑制。また、居抜き物件であることから内装を整えるだけでよく、出店までのリードタイムを縮めることができ、1週間に2店舗オープンのハイペースで拡大していった。

確かにリラクゼーション店というと駅前などの繁華街に出店されているイメージが強い。見逃していただけかもしれないが、郊外のロードサイドでこうした店はあまり見かけない。しかもコンビニの居抜き物件に着目した点も“目利きだった”といえる。コンビニはもはや飽和状態で、競争力のない店の撤退は珍しいことではない。さらにロードサイドの“元コンビニ”なら駐車場が併設されていることがほとんどで、客はクルマでリラクゼーションの施術を受けに来られる、というワケだ。

小河氏によると「500店は通過点。1,000店舗オープンを目指しています」と意気込む。

●セラピストは全員が個人事業主
ロードサイドをねらったことだけがこの急成長の理由ではない。客に施術を行う「セラピスト」と同社の関係性も急成長を後押ししたといえそうだ。全国500店舗で9,000人以上のセラピストが働いているが、全員が“個人事業主”だという。つまり社員ではなく“フリー”だ。

同社は店舗や施設というリラクゼーション環境を整え、そこで個人事業主が客に施術し料金をもらう。小河氏は割合については明かさなかったが、その売り上げをセラピストと同社で分け合うのだという。つまり“大家と店子”、いや“劇場と興行主”の関係といったら近しいか……。

○研修センターを充実させセラピストを育成

個人事業主であるセラピスト側にもメリットがある。育児などで時間の融通が利かないセラピストはフルタイムで働かなくてもよいし、ほかの仕事と兼業する“ダブルワーク”も可能だ。ただ、小河氏によると、セラピスト1本で収入を得ている人の割合が高いという。 同社ではこのセラピストの育成に重点を置いている。小河氏は「リラクゼーション事業をスタートさせてからこのかた、ほぼ広告宣伝にお金はかけませんでした。しかも店舗も居抜きです(笑)」と笑みをこぼしながら、「そのぶん、研修センターへの投資に重点を置きました」と話す。同社には現在、全国に22カ所の研修センターがあり、今後も増やす予定だ。

また、2017年1月から「報酬ランクアップ制度」を導入するという。これは全国で一律だったセラピストへの報酬を作業時間や指名回数に応じて上積みする報酬体系。さらに毎月1回だった報酬支払いを月3回に増やし、セラピストにできるだけ早く支払えるようにする。 なお、指名料金については100%セラピストの収入になるそうだ。つまり施術がうまくなって客に“贔屓”にされれば、そのぶん収入も上がっていくわけだ。

●500店舗達成を機に“屋号”変更
同社は4月1日に店舗名をそれまでの「りらく」から「りらくる」に変更した。これは、それまでの「りらく」に“急成長を遂げたミラクル”をかけたものだそうだ。

なぜ、このタイミングで屋号を変更したのか。それは500店舗到達を機に“リブランド”することで、1,000店達成に向け勢いづかせたかったからだ。ストレッチをメインにした「Re.Ra.Ku」という他社チェーンと紛らわしかったという理由もある。なお、店名変更を機に全店舗にタブレットを導入。客一人ひとりの施術についてタブレットから本部に送り、それを分析してサービス向上に役立てるという。ちなみにタブレットは2,200台に上った。

競合する他社との差別化について小河氏は「駅前型のチェーンは10〜30分の“クイック”な施術がメインです。ですが我々は『60分、2980円』がコンセプト。60〜90分間、お客様にリラックスしていただきたいです。むしろ120分の“映画”を意識しています」と語った。

実店舗を見学させていただいた際、こんなシーンに出くわした。飛び込み客が「60分コース」を頼んだところ、予約をしていなかったため「45分待ちになります」と告げられていた。それに対してその客は「では待ちます」と答えた。筆者なら45分待ちなんてことになったら諦めて帰るが、この客は施術の時間も含め“105分”を費やしてでも、サービスを受けたいということか。「映画の120分と比べてほしい」という言葉は、「あながち的外れではないなぁ」と感じた。

(並木秀一)