【8月18日 AFP】土星を取り巻く氷粒子の輪(リング)のうち、小型衛星2個に挟まれて細いリボン状になっている謎の多い「Fリング」は、天体の衝突によって形成された可能性が高いとの研究結果が17日、発表された。

 太陽から6番目の惑星、土星の中心から約14万キロの距離にあるFリングの軌道は、他のリングと衛星数十個とを隔てる境界域内に位置している。

 これより土星寄りの内側では、土星の強力な潮汐力を受けるため、リング領域にある何百万もの氷の塊は凝集して衛星を形成することができない。

 一方、これより外側には、土星からの距離が十分離れているために自らの重力で球形に凝集した土星の主要衛星が位置している。これらの衛星は、ミマス(Mimas)、エンケラドス(Enceladus)、太陽系で唯一の有意な大気を持つ衛星であるタイタン(Titan)などだ。

 境界域では、Fリングの氷粒子は幅わずか100キロ程度の帯となって土星を周回しており、衛星プロメテウス(Prometheus)とパンドラ(Pandora)がその内と外を周回している。

 これらのいわゆる「羊飼い衛星」が、Fリングの幅の狭い形状の保持に部分的に関与していることは、科学者らの間では長年知られていた。だが、この特異な形態がどのようにして生じたかについては、これまで不明だった。

 神戸大学(Kobe University)の兵頭龍樹(Ryuki Hyodo)氏と大槻圭史(Keiji Ohtsuki)氏の天文学者チームはこのほど、コンピューターシミュレーションを使用して、プロメテウスとパンドラが、土星のリング系の外縁で起きた衝突の副生成物である可能性が高いことを示した。

 この線に沿うこれまでの推論では、氷でできた小型衛星2個が正面から衝突して崩壊し、土星のリング系に新たな輪を追加したとの結論が下されていた。

 だが、もっと壊れにくい天体同士が、ある一定の角度で衝突したらどうなるだろうか──この場合、小型衛星は完全に破壊されず、「衝突で一部が崩壊するだけ」と英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に掲載された論文で執筆者らは結論付けている。

 そして、この衝突により、「粒子でできた、幅が狭い輪の形成」が起き、これが新たなリングになるという。

 さらに、兵頭氏と大槻氏のチームは、ガス状巨大惑星では、この種のプロセスが1回限りの特異な現象ではなく、特定の条件下におけるリング形成の「自然な結果」である可能性があると推測している。

 フランス国立科学研究センター(National Centre for Scientific ResearchCNRS)の科学者、オーレリアン・クリダ(Aurelien Crida)氏は、今回の結果は「土星のFリングだけでなく、天王星のリング系も説明できる可能性がある」と同時掲載された解説記事に記している。(c)AFP