【8月7日 AFP】エジプトのアブデルファタフ・サイード・シシ(Abdel Fattah al-Sisi)大統領は6日、拡張工事を終えたスエズ運河(Suez Canal)を披露する大規模な式典を開いた。経済の活性化と世界における地位の向上を目指して開通させたこの新運河では、早速船舶の通航が始まった。

 シシ大統領は軍の礼服に身を包み、ヨットで到着。後方には海軍の艦隊が続き、上空には戦闘機やヘリコプターが飛び交った。

 後にスーツに着替えたシシ大統領が、総工費90億ドル(約1兆1000億円)を費やした新運河の正式開通を発表すると、外国の要人らをはじめとする式典の出席者数百人から大きな歓声が上がった。

 治安強化と荒廃した経済の立て直しを公約して昨年大統領に就任したシシ氏は、同年8月に同運河の拡張に着手。当初は最長で3年かかるとされたが、同氏は完工まで12か月という野心的な目標を掲げた。

 この拡張工事は、10年近くかけて1869年に開通した紅海(Red Sea)と地中海(Mediterranean Sea)を結ぶ192キロの既存のスエズ運河に並ぶ、歴史に残る偉業とうたわれてきた。

 全資金を国内から調達したこの拡張部分は、一部が既存の運河と平行して走っている。35キロについては新水路を掘削して既存ルートを事実上「複線化」したのに加え、37キロの既存水路の拡幅深底化工事も行った。これにより、船舶の待ち時間を現在の18時間から11時間に短縮できるという。

 政府の試算によると、運河を利用する船舶数は、現在の1日当たり49隻から、2023年までに同97隻に増えると見込まれている。またこれに伴って通航料も、今年1年間の予想の53億ドル(約6600億円)から、2023年には132億ドル(約1兆6500億円)への増収が期待されている。

 しかしこれらの見通しについて、アナリストらは懐疑的だ。イタリアの海運仲立業バンチェロ・コスタ(Banchero Costa)の研究部門を率いるラルフ・レシチンスキー(Ralph Leszczynski)氏は、「船舶所有者や貿易会社が最優先するのはスピードではなくコスト削減。近年では通常よりもスピードを落として運航する傾向にあり、それも燃料費節約のためだ」と指摘している。(c)AFP/Haitham el-Tabei