おなじみの大手携帯会社よりも、ぐんと安くスマートフォンが使えるのがMVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスだ。"格安スマホ"、"格安SIM"の利用者は増加の一途をたどり、追い風も吹く。しかし、本格的な盛り上がりは、まだこれからだ。MVNOはどんな課題を抱えているのか。

格安の通信サービスを提供するMVNOが抱える課題とは

大手携帯キャリアの実質ゼロ円端末の自粛の影響は?

格安なモバイル通信サービスを提供するMVNO。そのMVNOに今、サービスの普及を促進する追い風が吹いている。総務省が昨年12月に公表した指針(スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針)が風を送り込んだ。

この指針は、昨年9月に安倍首相の指示のもと、家計に占める通信料金の負担軽減を目指し、有識者、業界関係者の議論を経て、総務省が取りまとめて公表したもの。そこにMVNOのサービス普及・拡大を後押しする材料がいくつか盛り込まれている。大手携帯会社3社が2月から実施した実質ゼロ円以下での端末販売をストップしたのは、まさに、同指針の流れを受けたものである。

これによって生じたのは、1月と2月におけるスマートフォン販売台数の劇的な変動だった。1月末までは従来どおりの販売を行ったため、駆け込み需要が発生、2月以降は、その反動が生じた。BCNの調査結果によると、1月のスマートフォン販売台数は、大手携帯会社3社ともに前年同月比3割の大幅増となった。しかし、2月には一転、同約3割減となっている。

KDDIの田中孝司代表は2月初頭に「(前年同月比で)2月は確実に2割は落ちている。店舗によってはもっと影響も出ていると思う」などと発言したが、それ以上の悪い結果となったわけだ。

携帯キャリア別スマートフォン販売台数。2016年2月は前年比で大幅減となった(出展:BCN)

2月になって販売が低迷し始めた大手携帯会社のスマートフォン。大手が失ったユーザーの行き先は、通信料金の安いMVNOとなりそうだ。BCNでの調査結果では、MVNOのサービスが伸びていることがわかる。しかし、MVNO各社としては「今は販売に結びついていない」というのが共通の感覚。そもそも母数が少なく、例月増加傾向にあり、極端に増えているとは実感できないのだろう。MMD研究所の調査結果によると、格安SIMの利用者はわずか6.9%、増加傾向にあるとはいえ、まだ少数派なのだ(2016年1月「格安SIM利用者意識調査」)。

追い風吹けども盛り上がり切れない、それが今のMVNOだ。大元の原因として、2年間の継続利用を前提に基本料金を割り引く、いわゆる"2年縛り"の存在がある。契約後、2年経過後の一定期間外(更新月以外)の契約解除は、1万円近い違約金の支払いが必要になるというルールだ。

現在は、このルールがMVNOへの移行を鈍らせる足枷のひとつになっている。いわば、MVNOへの移行を促す追い風は吹いているが、2年縛りという衝立(ついたて)が風通しを悪くしているのである。