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ギョッと驚くハイテク養殖 魚の旬も変える

日本水産、安定提供実現へ

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 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉も大詰め。グローバル化が本格化すれば農産品や肉の価格競争はさらに激しさを増す。水産品も例外ではいられない。品質の高い水産品を安定的に提供しなければ、いずれ居場所を失いかねない。大競争時代を勝ち抜くため、進化を続ける水産の最前線を追った。

イケス沈め沖に 波の影響減らす

宮崎県串間市沖――。波間に浮かぶブイ。その約10メートル下にイケスが沈む。手掛けるのは日本水産グループの黒瀬水産(宮崎県串間市)で、なかには5000匹のブリが泳ぐ。

イケスはオモリ役を果たす水入りタンクの重さで海中に沈んでいる。タンクに空気を押し込み水を抜くと、イケスは2~3分で海面に姿を現す。「潜水艦と同じ要領」(原隆常務取締役)で、沈む場合は10分ほどだ。

ところでなぜイケスを沈ませているのか。答えは沖合にイケスを出すためだ。

通常、イケスは海面に浮く。波と一緒に揺られ、波が大きな沖合に出すと大波の際、破損してしまう。養殖場所は波が静かな湾内に多いのはこのためだ。

しかし、水中では波の影響はほとんど受けない。例えば海上に浮かべたイケスなら1分間に4回、10メートルほど上下する波でも、海中に沈めると2分間に1回0.5~1.5メートルほど上下するだけだ。

湾内は沖合に比べると水質も悪い。夏場は赤潮の被害に遭うリスクもある。

沖合なら問題はない。水産庁によると九州の場合、年間100件以上の赤潮が発生、被害も10件前後あるが、同社は過去10年で1度も被害を受けていない。

「ブリの旬は冬」。こんな常識が通用しなくなる日がやがて来る。

通常、天然のブリは5~6月に産卵期を迎え、その後は身が痩せてしまう。そこで日水は大分海洋研究センター(大分県佐伯市)で産卵期を10月にずらし、春から夏にかけて冬同様、脂が乗ったブリを楽しめるようにした。

日水はブリの産卵から生育まで全工程をコントロールする完全養殖の技術を持つ。親魚を陸上の水槽で育てて産卵させるが、この際に水槽の水温や明るさを調整、日の出や日の入りの時間も照明で組み替える。ブリに季節を勘違いさせて、秋に産卵させてしまうわけだ。例えば冬場でも夏と錯覚させるために水槽の水温を26~27度程度にし、夏場は逆に15度程度に設定する。冷たい水を入れたり、水槽内のパイプに温水を流したりする。

産まれた卵は黒瀬水産の頴娃種苗センター(鹿児島県南九州市)に運ぶ。丁寧に管理、稚魚をふ化させて沖合に出せるようになるまで2カ月ほど育てる。これを水槽から輸送車に詰め、宮崎県の漁場に運ぶが、魚に傷がつかないよう1匹ずつポンプで吸い込んで移送用の水槽やトラックに移すのだ。

2人がかりで稚魚を追い込む。網の中央にホースを取り付け、稚魚を水ごと吸い込んでいく。巻き網漁の要領だ。こうして年間に輸送する稚魚の数は40万匹程度。原常務取締役は「以前は人海戦術でバケツリレーをしていたが、随分楽になった」と話す。

 ▼完全養殖 天然の魚から採卵し、人工授精で生まれた魚同士を掛け合わせ、その後何世代にもわたって掛け合わせて育てる養殖方法。通常の養殖は天然の稚魚を仕入れて育てるが、完全養殖では天然資源に頼らないため環境の変化に強い。価格や品質、出荷数量を安定させやすい。
 技術が確立されれば理想的な親魚同士を掛け合わせるなどして、理想的な大きさや肉質の養殖魚を安定的に出荷できる。現在はサケやブリなどで事業化され、天然物よりも高めの価格で販売されている。

食欲センサーで自動給餌

魚の養殖で最も大切なのがエサだ。

エサを食べたい時間は魚種や生育段階によってそれぞれ異なる。通常は養殖業者が経験からタイミングを見計らって沖に出てエサをやるが、それがいつも魚の空腹時とは限らない。

日本水産はこんな問題を自動給餌機で解消した。仕組みはこうだ。

まずイケスの上に箱形の給餌機を設置、そこから1本の「食欲センサー」を海中につり下げる。センサーを引っ張るとエサが海中に落ちる。魚は空腹時にセンサーを引っ張りエサを食べる習慣がつく。すでに銀ザケの養殖で導入している。

人手では10キログラムのエサを食べさせていた場合に比べ、自動給餌機は12キログラムを食べさせられたという。しかも、食べ残しも減らせる。海洋環境にも良い。

電源はソーラーパネルだ。魚がエサを食べた時間や量、水温などデータを収集し、水中カメラで撮った画像をパソコンや携帯電話に転送できる。

人手に頼っていては限界があった水産。技術で磨けば次ぎの展開が見えてくる。

エサの開発にも力

水産各社や飼料会社はエサの開発に力を入れている。イワシやサバ類などの魚を加工したりそのまま与えたりする生エサに比べ、保管や輸送など管理がしやすいことが利点だ。またエサの成分を調整することで養殖魚の肉質を変えられることも大きい。

マルハニチロの「ツナフード」はソーセージの形をした、クロマグロ養殖向けのエサだ=写真。2000年代に入り林兼産業(山口県下関市)と共同開発し、マルハニチロのクロマグロ養殖のエサのうち2割を担っている。

中身はカタクチイワシの魚粉や魚油で、食品にならない物を有効活用している。大きさは成長に応じて4種類の大きさを用意した。

カギを握るのがウインナーやソーセージの製造技術で、ツナフードは餌を食用フィルムに包んでいる。食用フィルムに包むことで海水に溶け出すことはなく沈むこともない。ソーセージ状で黒っぽい、魚のような見た目であることもあり、マグロはほとんど食べ残さないという。

通常、クロマグロを1キログラム太らせるには生エサ15キログラムが必要だが、ツナフードなら3~4キログラムで済む。また生エサは凍らせて保管しなければならず、持ち運びや解凍などに労力が必要だ。

ツナフードは常温保管のため、こうした手間が不要になる。養殖マグロの商業化へ重要な役割を担っている。このようなエサに関する先端技術は牛や豚のように、肉質に天然魚にない特徴を持たせることができる。

(企業報道部 宮住達朗)

[日経産業新聞2015年3月2日付]

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