「今から、私たちが発明した“楽器”についてお話したい」――。

 2015年6月23日、仏カンヌで開催された「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の表彰式に、1人の日本人男性が登壇した。スピーチを披露したのは、広告コンテンツなどを制作する博報堂ケトルの畑中翔太氏(写真1)。同氏が指揮するプロジェクト「Eye Play the Piano」が、銅賞にあたる「ブロンズ賞」を2部門で受賞したのだ。

 同フェスティバルは、世界各国から約1万人の広告業界関係者が参加する広告の祭典。米ニューヨーク市で開催される「クリオ賞」や「ワンショー」と並ぶ、世界三大広告賞の一つだ。今年は、2015年6月21日から27日まで開催された。出品された広告作品や商品が、新聞や雑誌、Webサイトなど10以上の部門にわたって、デザインやテクニックの先進性、技術、独自性を競う。それぞれの部門で、金、銀、銅賞が授けられる。

写真1●「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の受賞式のようす。世界三大広告祭の一つで、世界で最も権威のある広告賞が発表される(写真提供:博報堂ケトルの畑中氏)
写真1●「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の受賞式のようす。世界三大広告祭の一つで、世界で最も権威のある広告賞が発表される(写真提供:博報堂ケトルの畑中氏)
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写真2●受賞スピーチを披露する、博報堂ケトルの畑中翔太氏。指揮したプロジェクト「Eye Play the Piano」は、2部門でブロンズ賞を受賞した(写真提供:博報堂ケトルの畑中氏)
写真2●受賞スピーチを披露する、博報堂ケトルの畑中翔太氏。指揮したプロジェクト「Eye Play the Piano」は、2部門でブロンズ賞を受賞した(写真提供:博報堂ケトルの畑中氏)
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 「Eye Play the Piano」は、手や腕が不自由な人がピアノを演奏するためのアプリケーション。直訳すれば、“目でピアノを演奏する”となる。日本発のベンチャー「FOVE」と、東京都板橋区にある筑波大学附属桐が丘特別支援学校が、共同プロジェクトで開発した。実際には、FOVE製の視線追跡機能を搭載したヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)のディスプレー画面に、ピアノの鍵盤の代わりとなる映像が投影され、その映像を視線で追うことでピアノを演奏する。Webサイトを中心としたデジタル分野での広告やアプリケーションが対象の「サイバー部門」と、併催された「ライオンズ・ヘルス」の「ファーマ部門」(医療分野が対象)で銅賞を受賞した(写真2)。