2014年1月29日公開記事を、編集・修正して再掲載します。

「ビジネスとは人脈である」と思っている人は多いのではないでしょうか? だから起業家は、せっせと人脈作りのイベントに通ったりします。

でも、カナダのエドモントンでブランドアイデンティティやウェブサイト制作などを行うデザイン会社「Paper Leaf」の共同創設者、ジェフ・アーチバルド氏は、それは「見当違い」だと指摘します。その理由とはいったい何なのでしょう?

ちょっと口は悪いようですが、言ってることはごもっとも。ぜひ、今後のビジネスの参考にしてください。

はっきり言うけど、人脈作りなんて面白くもなんともないし、きっとあんたには向かないよ。いや、おれ自身そうだから。俺は人脈作りなんて嫌いだし、苦手なんだ。だから、やろうとも思わない。

だからといって、ビジネスで新しい人と出会うことはやめられない。そいつが新しいビジネスを俺の会社(Paper Leaf)に運んでくれることだってある。

え、「それって人脈作りじゃん」だって? いや、少なくとも俺にとっては違うんだ。その理由を話す前に、ちょっとこのストーリーを聞いてくれ。

ビールと新事業立ち上げと

ちょっと前、クリスティ(仮名)という女と飲みに行ったんだ。彼女は、フリーランスデザイナーという合法的に恐ろしい世界で独立を目指してる。業界内の知り合いから俺のことを耳にして連絡してきたらしい。2人で立ち上げたPaper Leafを、どうやって毎年収益が倍増してる5人の会社にまで成長させたかを聞きたいんだと。

俺は、この手の会話が大好きなんだ。ビジネスについてだったら、何日でも語れる自信がある。相手の出発地点と今後の計画を聞いて、それを助ける方法を考えるのが楽しいんだ。ビールぐらいどうってことないよ。

俺のことはいいとして。クリスティはイラストに特化したデザイナーだ。独立してやっていくために顧客リストを作りたいとのこと。でも、彼女の顧客探しと仕事探しは難航してる。

いや、モレスキンのノートを毛布にして路上生活を送りたいんだったら別だけど、そうなりたくなかったら、顧客も仕事も必要だろ。だから、こんなときにいつもするアドバイスを、クリスティにもしてやったんだ。「とにかく人に会いに行き、地元のデザイン/ビジネスコミュニティに参加しろ」と。それにクリスティはこう答えた。

「これまで、いろんなイベントで人脈作りに努めてきました。たくさんの人に会って、たくさんの名刺を配って。イベント後には、『仕事が必要だったら声をかけてください』というリマインドメールだって送ってるんですよ。でも、仕事の話が来たことは一度もなくって...」

ビジネスには人脈作りが必要──確かに、そいつはとっても論理的な話だ。でも、人脈作りって、名刺を渡して自分が何者かを伝えることなのか? そんなはずはないだろう。だから俺は、「人脈作り」という言葉について、ありがちな誤解を解いてやることにしたんだ。

人脈作りの問題点

確かに、クリスティのアプローチには、何の悪意もない。ただ、ちょっと見当違いなだけなんだ。その見当違いこそが、「人脈作り」に苦しむやつらに共通の問題点だったりする。実はかつて、俺もそんな見当違いをしていたんだ。

何が問題かって? ずばり、「人脈作り」を自己中心的に解釈しているところだよ。「私」は名刺を渡した。「私」はフォローをした。「私」は、仕事があったら「私」に連絡してくださいとリマインドした。

...どこもかしこも「私」だらけだろ? そんな状態で、相手にはいったい何の得があるってんだ。たまたまあんたのサービスを相手が必要としてるという奇跡的な状況でもない限り、相手があんたとの関係を築くことには、何のメリットもないんだよ。

人脈作りのイベントにたくさん参加したって言うけど、いったいどんな心構えで参加したんだ? どうせ「仕事をくれそうな人と会えるかな」「このイベントには潜在的なビジネス機会があふれてる」なんてよこしまな考え方だろう。最初っから自己中。だから、人脈作りなんてもんは、いつも失敗に終わるんだ。

じゃあ、どうしたらいいかって?

人脈作りなんてやめちまえ!

まずは、地元のビジネスイベントを「人脈作りのチャンス」と思うことをやめろ。そうではなくて、「人助けのチャンス」だと思うんだ。与えられる者ではなく、与える者になれ。自己中な考え方を改めろ。それは必ず自分のところに戻ってくる。ホントだぜ。

人助けをすれば、相手は必ず覚えていてくれる。そして、あんたのサービスが必要になったら、必ずあんたのところにやってくる。たとえば、デザインが必要になったマーケティングマネージャーはどっちに電話すると思う?

デザイナーAさんは、かつて名刺をくれて自分のスキルについてとうとうと語った。一方、デザイナーBさんは、そのマーケティングマネージャーのビジネスについて聞き、イベント後には興味がありそうな記事/先行事例/ウェブアプリケーションを連絡してきた。

俺だったら、Bさんに金を払うね。俺の会社では、自分たちに向いてない仕事をほかの会社やフリーランサーに委託してる。委託先は、過去に俺たちを助けてくれた人たちだ。突然押しかけてきて20分間セールストークを続けた(実話)やつには、連絡なんかするもんか。

だから、ビジネスを目的にしちゃいけない。相手を理解し、助けることを目的にするんだ。

そんな心構えを持つには

じゃあ、この新しい心構えを、クリスティに当てはめてみよう。クリスティはこれまで、ビジネスに発展する「人脈作り」に備えていた。言うなれば、オンラインマーケティング会社のオーナーのようなアプローチだ。握手して、名刺交換して、自分についてちょっとだけ話す。

で、1日か2日後に、「私を覚えておいてくださいね。私はデザインをやってます! 私にお金を払ってね!」と念押しのメールを送る。

これをこんな風にしたらどうだろう? 相手の興味や課題を理解する機会に備えるんだ。「人脈」なんて言葉は考えるな。オンラインマーケティング会社のオーナーに近づき、相手に自己紹介をさせて、相手と握手して、相手の名刺をもらって、相手のビジネスや業務内容について質問する(ここであんたが本当に興味があるかは問題じゃないが、できれば興味を持ってほしい。世の中には、学ぶべき面白いことがたくさんあるんだ)。

そして、1日か2日後に彼女は、そいつにとって有益なフォローアップメールを送るだろう。それはもしかしたら、彼女が偶然見つけた最適化変換に関する記事かも知れないし、彼女の元上司が信頼を置いていた従業員のマネジメントに関する電子書籍かもしれない。いや、そのオンラインマーケティング会社が得意そうな先行事例かもしれない。

とにかく彼女は、「最後の手段」を何度も繰り出すんだ。そして重要なのは、彼女の行動からは何ら見返りへの期待は感じられないってこと。

本当に大事なこと

人と会い、相手を助ける方法を考える。相手のビジネスを知り、相手の痛みや課題を把握する。これを心がけるといい。そして、相手の役に立ちそうな記事、電子書籍、アプリケーション、仕事があったらそれを相手に送る。見返りを期待しない。誠実であれ。

俺が人脈作りをしない理由は以上だ。俺は人と会って、人を助ける。これを誠実にやっていれば、ビジネスなんて後から付いてくるんだよ。騙されたと思って、やってみるといい。

Jeff Archibald(原文/訳:堀込泰三)