Inc.:作家のJeff Sutherlandさんは、著書『SCRUM: The Art of Doing Twice the Work in Half the Time(スクラム:半分の時間で倍のことをする仕事術)』の中で、テック業界に革命を起こしたユニークなマネジメント術のことを書いています。今回はその信条の基礎であり、「スクラムの十戒」とも言える、テック業界を変えビジネスのあり方に革命を起こした、開発過程のマネジメント10カ条をご紹介します。

1.1日1会議

15分で自分の作業とチームを調整し、進行の妨げになるものを見つけます。2時間以上かけて現状報告に終始したり、誰かの過失を責めるような会議はなくしましょう。

2.仕事を可視化

米国企業のなかで最も時間のムダとなる要因の1つが、チームメンバーが互いにどんな仕事をしているのかを知らないことです。その結果、作業が重複したり、必要のない作業や優先度の低い作業に時間を取られたり、秘密主義や間違いが発生します。しかし、仕事すべてを「これからやる」「今やっている」「完了」の3つに分類して壁に貼っておくだけで、大量のムダが省けます。仕事が速い企業やチームは、全員がそれぞれ何をやっているのかを把握しています。

3.チームは小さく

9人以上のチームは大き過ぎます。チームは小さいほど良いです。小さなチームのほうが経費も少なく、生産性は高く、稼働が速いことが、数多くの調査で証明されています。20人のチームよりも5人のチームの方が仕事が速いです。遅れているプロジェクトに人を追加すると、状況を複雑にして仕事をさらに遅らせるだけです。

4.結果の出ない会議はしない

毎回会議の前に、参加者全員がこの会議でどんな結果を出すべきなのかを明確に理解していなければなりません。その決断は他の方法でできないか? すべての会議では何かしらの結果を出します。出すべき結果が明確ではないなら、会議をやってはいけません。

5.肩書は要らない

最高のチームは、全員に"チームメンバー"という肩書があるだけです。組織内の役割が専門的になればなるほど、意思決定のスピードが遅くなるという調査結果もあります。外部向けに肩書が必要な場合は別にあってもいいですが、組織内で使っていては、肩書のせいで仕事が遅れます。

6.1つの仕事に集中する

人間というものは、マルチタスクが絶対にうまくできません。残念なことに、仕事ができない人ほどマルチタスクがうまいと思っていることが、調査で明らかになっています。報告書の作成からメールの返信など、めまぐるしく仕事を切り替えるたびに生産性はガタ落ちします。1度にやることは1つだけにしましょう。誰にも邪魔されない時間を作りましょう。そうすれば驚くほど生産性が上がります。

7.関わるプロジェクトは1つだけ

特定のプロジェクトに関わっている時間がどれくらいかと聞いたら、大抵50%以下で、時には20%程度のこともよくあります。ですから、そのプロジェクトには、最後まで100%関われる人を割り当てましょう。その人は、そのプロジェクトが終わったら、次のプロジェクトに移ればいいのです。

経営者肝入りで、それが会社の命運を左右する最優先のプロジェクトだと明言しているにもかかわらず、そのプロジェクトに割り当てられている人が、何かと掛け持ちで100%それに関わっていないケースもあります。驚くかもしれませんが、よくあることです。

8.優先順位をつける

組織内で4つも5つもプロジェクトを抱え、チームメンバーはプロジェクトを掛け持ちしながら仕事をしていることはよくあります。優先順位がすべてです。しかし上司や管理職は、優先順位などはないというようなことを言うことがあります。

1番価値のあるプロジェクトに力を入れ、それを最優先にします。そして、そのプロジェクトが終わってから次のプロジェクトに取り掛かります。1度に1つのプロジェクトに集中することで、すべてを同時進行していた時よりも短時間で、いくつものプロジェクトを終わらせることができます。数カ月早く終われば、会社も顧客も得をすることになります。

9.ヒーローは要らない

誰かがヒーロー的な活躍をして、プロジェクトを期限内や予算内に終わらせた時は、普通はハイタッチをして喜びますが、ヒーローは仕事の素晴らしさの証ではなく、本来なら健全に機能しているべきシステムが破綻している証です。

なぜヒーローが必要だったのでしょう? 計画が悪かったのですか? ヒーローの存在は組織の失敗を表しているものであり、祝福すべきものではありません。アメフトのヘイルメアリーパス(ゲーム終盤で苦戦を強いられているチームが最後の賭けとして得点を狙うために投げるロングパス)は、たとえ結果が成功だったとしても破れかぶれの行為であり、素晴らしいチームの証ではありません。

10.タイムシートは要らない

社員が何時間そのプロジェクトに関わったかを測るのは、意味がありません。にもかかわらず、いまだに社員の給与や契約の内容、努力の評価は、勤務時間が指標になっています。

何かを作るのに何時間かかったかが本当に大事ですか? 本当に大事なのは、作ったものの価値がどれだけあるかということではないですか? インプットではなくアウトプットで測りましょう。短い時間でより価値のあるものが生まれます。モットーは「あまり働かずに良い仕事をすること」です。努力と時間を等しく扱うのは、ムダなことです。

How to Work Less and Get More Done|Inc.

Jeff Sutherland(訳:的野裕子)